添詩・竜田の少年 -鉄路は消えた-

『竜田駅』

レールは消えた
  あの雲の中 レールは消えた
もう 軋みはしない
  摩擦に輝くこともない
それでも 季節は物語り
  過ぎし日を 証すのだ
「一本は情を乗せて
  一本は想を乗せて
    駆動輪は回り
      景色は巡る」
「ありふれた移動
  窓の風は優しくあり……」
「いつ還るの?」
「あそこは在るの?」
「ご覧よ
  あれは 真っ赤な 闇だ
    昨日 行きそこねた
      連綿の 往く末だ」
レールは消えた
  残るのは親密な昔
    消えたレールは草の波を湛え
      戻れぬ道は彼方の空の青に滲んでいく

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